巨額の初期投資を、何年もかけて回収していく。鉄道という未知の産業に投資が集まったイギリスで、「減価償却」という考え方が生まれました。そして今、同じくらいのインパクトを持つ技術革新が目の前にあります――生成AIです。
今回の講義感想会では、「世界史から学ぶ会計入門 イギリス編」をテーマに取り上げました。会計の話として始まった対話は、「時代は繰り返すのか」「私たちは何に勇気を持って投資するのか」という、いまの自分たちの話へと変わっていきました。
今回のテーマ動画
会計の成り立ちを世界史とともにたどるシリーズ三部作の真ん中、イギリス編です。産業革命期のイギリスで、鉄道会社という巨額の初期投資を要する事業にどうやって投資家を集めたのか。その過程で「減価償却」という新しい会計の仕組みが考え出され、会計が「お金そのものの管理」から離れ、企業活動をより正確に表現するものへと発展していきます。あわせて、元軍人と若手を組み合わせた鉄道会社の組織運営など、新しい産業が新しい制度やルールを生んでいく過程が語られる講義でした。
アイスブレイク――「数年かけて元を取る」投資、していますか?
動画の減価償却にちなんで、「最近購入・投資したもので、数年かけてでも元を取っていくぞ、というものは?」という問いからスタート。「中古マンション」「ゴルフクラブと会員権」「車」といった定番から、「歯列矯正」「椅子」「低温調理器」「トラックボールマウス」まで。なかには「この20年、心理学などのセミナーに何百万円も自己投資してきた。一生かけて元を取る」という方も。身近なところにも、“回収に時間のかかる投資”はたくさんあることが見えてきました。
参加者の声・気づき
鉄道への投資は、AIへの投資に似ている
複数のグループで共通して話題になったのが、鉄道とAIの重ね合わせでした。「鉄道会社への投資と生成AIへの投資、という比較は面白かった」「AI開発に数十兆円が投じられている今は、鉄道会社に大きく投資した時代と非常に似ている。同じ時代の中に私たちは生きているのだと感じた」。「当時の鉄道も、同じくらいのインパクトがあったはず。そのゲームチェンジの中で、自分たちが思ってもいないような発想が出てくる」という声には、多くの参加者が共感していました。
会計の歴史から「勇気」という言葉が出てきた
この回のキーワードは、意外にも「勇気」でした。「当時のイギリスで、未知の業界に投資し、しかも減価償却を含む新しい会計制度の中で投資判断をしていくのは、すごく勇気がいったのではないか。それを今に戻すと、自分はAIにチャレンジして投資できるだろうか。心配になりつつも、経験もお金も投資していかないといけないと改めて気づいた」。この言葉を受けて、「勇気を持って何をするのか、がポイントになる。制度を作ることも、自分で何かを作ることも勇気かもしれない」「そもそも勇気をどこに置くべきかは、人によっても企業によっても違う。自分なりに考えてみたい」と、問いが連鎖していきました。「新たな制度やルールを作るには勇気がいるが、行動が必要なんだと感じた」という振り返りもありました。
「減価償却」を考えて、制度にして、世界に広めたパワー
「鉄道業界に勝ち筋はあるのに、初期投資がかかりすぎて投資家に見てもらえない。そこで当時は想像もしなかった減価償却というルールを考えついただけでもすごいのに、それを制度化し、今では世界に広まっている。当時の人たちのパワーはすごかった」。「会計がお金そのものから離れていく、という考え方が新鮮だった。減価償却の仕組みが生まれた背景を興味深く感じた」と、会計を“暗記するもの”から“なぜ生まれたのかを考えるもの”として捉え直す声が続きました。
元軍人×若手――組織づくりへのヒント
講義後半の「元軍人と若手を組み合わせた組織づくり」の話は、グループによっては長く盛り上がったテーマでした。「今の時代なら、軍人ではなく、どんな組織・業種の人を組み合わせると面白いことができるだろうか。会社の今の状況に置き換えて、面白い採用ができるといい」「同じ職場に20代前半から60歳超までいるので、“世代のミックス”として考えてもいいのかもしれない」。人材育成に携わる参加者からは、「かつて企業が軍人に求めた能力が時代とともに変化したように、これからの時代に価値を発揮する人材像は何かを考えながら、研修企画に活かしたい」という持ち帰りも出ています。
時代は繰り返す――ただし、違う次元で
「一番大きく思ったのは、時代は繰り返すのかな、ということ」。この気づきは、こう深められていきました。「繰り返すといっても、同じことではなく、違う次元で似たようなことが繰り返される。鉄道という技術革新によって会計システムやさまざまな制度が生まれたように、AIという技術革新によって、これまでとは違う新しい社会システムができるのだろう」。感想会では「鉄道の登場による時差の統一」のように、技術革新が社会制度の変化と密接に関わってきた例も共有されました。「どんなシステムが生まれるのかを考えると、想像もつかなくて逆に恐ろしい。期待と同時に不安もすごくある」――その率直な言葉が、「みんなが勇気を振るって何かをやらないと」という話へとつながっていきました。
AIが広まると、人間側に新しい言葉が生まれる?
ユニークな視点も飛び出しました。「AIが全部経営をやっているお店がある、という話から、逆に人間側の言葉が生まれるのではという話になった。セルフレジが出たことで“有人レジ”という言葉が生まれたように、これまで当たり前だった“人間がやること”に、新しい名前がつくのでは」。想像していなかった言葉が生まれる未来を、楽しみながら語り合うグループがありました。
違う立場でも、同じ感想にたどり着く
「色んな立場、業種の方との対話で、考える道筋は違えど、同じような感想を持っていることに気づいた」「投資関連の仕事をしている方の“大きな流れで状況を見る力が必要になる”という視点が印象に残った」「自分で発言することで、自分の考えも整理されるようになった」――異業種の対話ならではの価値を挙げる声が、今回も多く聞かれました。「AI(昔でいう鉄道)だけでなく、その周辺にある社会システムにも目を向ける必要がある」というファシリテーターの締めのコメントにも、頷く参加者が多かったようです。
明日から持ち帰ること
「目の前の仕事を、少し俯瞰して見られるような気がした」「勇気を持って何に投資するのか。自分ができる勇気を持った行動とは何か、考えてみたい」「目の前の事象だけでなく、その背景や歴史的な流れを意識して物事を捉えたい。既存の常識を前提とせず、“なぜそうなっているのか”“今後どう変化するのか”という問いを持つことを意識したい」「新たな組織づくりの参考になった」。次に学びたいテーマには「続きのアメリカ編」「組織論の歴史」「哲学・キャリア・芸術など、普段じっくり考えることが難しいテーマ」「あえて仕事から遠い内容」が挙がりました。「世界史・日本史に個人的な興味はなかったが、今の世界や業界に関わることだと分かったので、歴史に興味が出てきた」――会計から始まった学びが、歴史への関心へと広がった回でした。
