「データ活用」「データドリブン」――反対する人はいません。でも、具体的に何をすればいいのか、今のハードルは何なのか。それを言葉にできている組織は、意外と少ないのではないでしょうか。
今回の講義感想会では、「AI時代だからこそ知っておきたいデータマネジメント超入門 ― 料理・図書館・哲学・経営とデータ ―」をテーマに取り上げました。“データ”という少し構えてしまう題材が、料理や図書館のたとえを通じて、一人ひとりの仕事の話として語られていく回になりました。
今回のテーマ動画
AIを使いこなす前提として欠かせない「データマネジメント」を、料理・図書館・哲学・経営という4つの切り口から読み解く入門講義です。AIに活用しやすい状態(AIレディ)にデータを整えるとはどういうことか。材料(データ)を、誰が、何のために食べる料理に仕立てるのか。蔵書を分類し探しやすくする図書館の発想。「何のために?」を問う哲学。そして、データの担い手をどう置くかという経営の視点。専門家でなくても親しみやすいたとえで、データとの向き合い方を考えさせる内容でした。
アイスブレイク――身の回りで「AIレディ」にしたいものは?
今回は動画にちなんで、「ご自身の身の回りで、データを整理してAIに活用しやすくしたい事柄は?」という問いからスタート。「気づいたらスマホを見て終わっている週末の予定」「項目が細かすぎて逆に分からなくなった家計アプリ」「行った店も行きたい店も混ざってぐちゃぐちゃのGoogleマップのピン」「紙で買ったのか電子なのか、読んだのか買っただけなのか分からない本」「サービスの受注データ」「Zoomの会話」――仕事もプライベートも、“整理されていないデータ”は誰の手元にもあることが見えてきました。
参加者の声・気づき
問いと仮説がないと、データに飲み込まれる
「データに疎ければ疎いほど、“何か新しいことが分かるんじゃないか”という魔法の杖のように見えてしまう。でも基本は、経験則や暗黙知から仮説を立てて、データで意思決定の裏付けを取ること。“材料はこれだけあるから好きなものを作って”では丸投げになる」――全体共有の口火を切ったのは、この指摘でした。「AIが出してくれるデータも膨大、インターネット上のデータも膨大で、とても頭では処理しきれない。何のために、という哲学の部分や仮説がないと、かえって飲み込まれてしまう」と、問いを立てることの重要性を挙げる声が複数のグループから上がりました。「“問いを立てる”という観点が自分には抜けていた」という振り返りも印象的でした。
「見えるもの全部教えて」の後ろにいる、本当の“食べる人”
データ分析に携わる参加者からは、こんな気づきが。「“目的や仮説はないけど、とりあえず見えるものを全部教えて”という依頼はよくある。でも会話していて、それはその人の意識だけでなく、もっと上のトップの意向がなんとなく乗っかっているケースも多いと気づいた。料理で言えば、食べる人がこの人だと思っていたら、その後ろに別の人がいたようなもの」。トップオーダーを担当者がかみ砕けていない、という構造です。だからこそ「目の前のお客様が本当に何を求めているのか、一緒に会話していくことが重要」という結論に至っていました。
「とにかく入力しろ」の先にある、データの“質”
「営業の仕事では、顧客のデータをどんなことでもとにかく入力することが大事だと言われてきた。でも、言葉の意味を統一するなど、データの質も大いに大事だと学んだ」。グループでは「システム導入時は注力されるが、導入の意図やデータの活用先を理解していなければ、メンテナンスはおろそかになりがち」という体験談が共有され、「“何のためにやるのか”が弱くなることが、メンテナンス放置につながるのでは」という仮説にたどり着きました。「追加で情報を得ようとするとお金も時間もかかる。できるだけ在りものの中で探し、その品質を上げていくことが重要」という視点もありました。
管理者は一人じゃなくていい――各部署に“中心人物”を
動画で触れられた「データの管理者を決める」という話に対して、あるグループでは「責任者一人に負荷が集中しすぎて大変」という実感から議論が展開。「データマネジメント責任者を一人決めるより、各部署にデータ活用の中心人物を置く方がいいのでは。活用とセットで考え、データに近い人を巻き込むことが重要」「料理を誰が食べるのか、どう食べるのかによって、メンテナンスの仕方も変わってくる」という考えにまとまっていきました。「活用が分からないとメンテナンスを続けるのはきつい。活用とセットでデータマネジメントを考えたい」「そもそもなぜデータを活用するのかを、入力する社員全員が把握して意識づけることが大事」と、組織全体の話に広がっています。
AIレディにするためにも、AIが使える
「AIレディの状態にするためにも、AIが使える時代だよね」という言葉に、グループ全員が納得したという声も。「これまでデータ分析は言語(コード)が分かる人しか使えなかったが、まずAIに出してもらい、その答えが合っているかもAIに聞ける時代になった」「人が第二言語より母国語で深く話せるように、AIの母国語であるコードで指示を出した方がAIをよりよく使える、という意見が出た。プログラミング言語を習得してみたくなった」と、学びの意欲にもつながっていました。
データを「誰が」伝えるか――そこに個性が出る
「“何のために”“どのように”という観点に加えて、“誰が”という観点もある。たくさんあるデータの中から何を選び、どんなストーリーで伝えたいと思うのか――そこに、その人の個性が出てくる。標準化は大事だが、自分なりのこだわりも逆に大事になってくるのでは」。全体共有の最後に出たこの気づきは、「答えを出すのはAIが得意でも、何を問い、どう伝え、何に結びつけるかは人間の役割」という感想会の冒頭のメッセージを、見事に回収する一言になりました。
明日から持ち帰ること
振り返りでは、具体的な持ち帰りが目立ちました。「いま手にできるデータは何か、工夫してもっと高品質にできないかを検討してみたい」「データ分析の前の整理・工数見積もり・作戦立案の際に、料理や図書館のメタファーで認識を合わせる」「資料作成でのデータの使い方・拾い方を“料理”の考え方に直すとイメージが固まりやすく、迷わない」「上長の定例報告で数字を引き出しやすい仕組みを整えているが、“誰が何のために食べる料理なのか”を念頭に置いて進めたい」「各部署にデータ活用の中心人物を置くとしたら、具体的にどんな依頼をすればいいかを考えてみたい」。
「図書館に例えるとデータに精通していなくても親近感がわく。チーム内で使いやすそう」「専門分野が違うことで、どの観点から物事を考えるのかという“違い”が同じ議題で交わり、良い化学反応になった。感想会があることで、理解した内容がより具体的になった」――次に学びたいテーマとしては「地質・気象・選挙結果など、ビジネス以外のデータ活用・意思決定の事例」「設問設計などデータの取り方」「AIエージェントの作り方」も挙がり、学びが次の問いへとつながっていく回になりました。
